過払い金の問題
消費者金融業界を騒然とさせた過払い金返還請求。
一時期、1兆円を超える貸付残高を有し、消費者金融業界の頂点に君臨した武富士だが、過払い金返還請求によって倒産に追い込まれたのは記憶に新しい。
学生ローン業界も例外ではないはずだ。
学生ローンの歴史は、1970年代からはじまり、現在も営業を続ける学生ローンがほとんどである。
この歴史は、実は武富士とそう変わらない年数なのだが、過払い金返還請求金額は、取引期間が長ければ長いほど、大きくなるのが一般的だ。
それも、古ければ古いほど、また、取引期間が長ければ長いほど、業者側からすれば深刻なものとなる。
最後の取引きから10年以上経過していれば時効となるが、大手消費者金融では継続して利用する利用者が多い為、過払いリスクは極めて高くなるのだ。
このような背景から、貸金業者は軒並み倒産に追い込まれる事態となった。
その数、全盛期の10分の1とまで言われるほどに減少した。
このことは、利用者側からすれば、過払い請求をすればほぼ返還される可能性が高い事を意味するものであるが、同時に貸金業者の体力衰退、やがては倒産に追い込まれ、過払い金も10分の1ほどしか受け取れないというケースはめずらしくない。
このことは、全盛期の10分の1ほどまでに減少した、貸金業者の数を見れば歴然である。
一方、学生ローンはというと、ほとんどが昔のまま営業を続けている。
これはいったい、どういう事なのだろうか?
その理由は、学生ローンならではのある特徴がカギを握っている。
そのカギとは、学生ローンを利用する者は、その利用期間が長くても大学1年生から4年生までの4年間と限定される。
しかも、学生という身分から、借入金額は多くて30万円、顧客平均単価はせいぜい20万円がいいところだろう。
一方、会社員や公務員が利用者のメインとなる一般の消費者金融は、利用期間が長い上、金額も大きい。
この両者の特徴から、過払い金返還請求によるダメージを受ける割合が、劇的に明暗をわける事となった。
利用期間と金額である。
貸金業者の貸付利率は、貸金業法が改正される度、幾度となく引き下げられた。
例えば、今から31年前(1983年)の一般的な貸付利率は、年73%という今では考えられない高金利だ。
利用期間が長いと、このような73%時代の顧客からも過払い請求されるリスクがあり、しかも利用金額も大きいわけだから、過払い金学はとてつもなく大きな金額となるのだ。
一方の学生ローンは、73%時代の利用者も当然いたのだが、その多くは10年以上前に完済しており、事項が成立している可能性が極めて高い。
また、利用金額も少額なので、過払い金返還請求をしたところで金額はたかがしれている。
しかも、10年も20年も前に学生ローンを利用していた者の多くは、現在は中年のサラリーマンである。
既に所帯持ちとなっているケースがほとんどだ。
そんな状況で、わずかな過払い金の為に、いちいち面倒をおこしたくないというのが本音としてあり、こういった事情が学生ローンが過払い金返還請求の被害を最小限に抑える要因となっている。
学生ローンの業者から見た場合は、まさに一歩間違えば危機的状況だったわけだが、遥か昔に利用していた者からすればとんだとばっちりである。
現在、既存する貸金業者の多くは、その昔、実質年率73%という高金利で急成長を成し遂げた。
いわば、古くからの利用者が貸金業者を育てたと言っても過言ではない。
そんな彼らが、一方では多額の過払い金を受け取り、一方では泣き寝入りとなっている。
そもそも過払い金返還請求自体が異常な様であるが、それはそれでさておき、過払い請求をした者が得をし、自粛する者が損をするという、いわば正直者がバカを見る時代なのである。
銀の斧を拾った者が得をする時代は、はたしていつになったら訪れるのだろうか。